リアルな “アデリアレトロ” に会いに行った話

1.はじめに

わたしは、愛知県岩倉市で観光まちづくり事業を企画・運営する「NPO法人いわくら観光振興会」で働いています。岩倉市は、愛知県の北西部、西尾張地区にあり、市のほぼ中心を流れる五条川は「日本のさくら名所100選」に選ばれたお花見処で、毎年春に行われる“岩倉桜まつり”が有名です。そんな五条川の桜のように、すでに観光地として認知されているような名所に行くことだけが観光ではないという考えから、日々まちの新しい観光資源を探しています。今回は、巷で話題の「アデリアレトロ」※1 を題材に、BtoBメインの企業と市民とを“観光”のチカラで結びつけたい!という話をします。

※1「アデリアレトロ」・・・
愛知県岩倉市に本社を置く石塚硝子株式会社のブランド「アデリア」の商品ラインナップの名称。2018年から販売を開始し64万個を販売する大ヒットを記録している。かつて昭和の家庭で使われていたアデリアのグラスウェアを現代でも安心して使えるようリメイクした製品で、花や動物など、かわいらしい柄をあしらったプリントが特徴。親しみやすいデザインと手頃な価格で人気の柄を復刻したシリーズ。

(写真:アデリアレトロ。当時の製品に貼られていたシールも復刻している。すべて著者私物。)

2.昭和の時代の古き良き「アデリア」が好き


昨今の昭和レトロブームで、インスタントカメラや純喫茶が若者に人気だと話題ですね。流行は繰り返すと言いますが、私も正直「アデリアレトロ」がここまで大きなムーブメントになるとは、当初予想もしていませんでした。

(写真:石塚硝子株式会社岩倉工場)

仕事柄、石塚硝子さんとは元々お付き合いはありましたが、何を隠そう、私自身が「アデリア」の昭和の食器のファンでして…。何がそんなにいいのか?というのをお話していきたいのですが、まずは、話題の「アデリアレトロ」に代表されるプリントグラスではなく、同時期に人気を博したアンバー※2の食器や、重厚感のある透明のグラスについて見ていきましょう。

(写真:アデリアのアンバーのカップ。色々な形がある。すべて著者私物。)

石塚硝子の中に「アデリア」があるの?「アデリア」が今の名前なの?と、色々混同しがちですが、「アデリア」とは石塚硝子の一般家庭用の食器ブランドの名前です。
創業1819年の同社は業務用ガラス製品の製造に始まり、60年代から一般家庭用に食器の量産を始めます。そのブランドをアデリア海のような美しい輝きに例え「アデリア」と名付けたそうです。
そして、アンバーとは、
※2アンバー(琥珀色)の食器シリーズの通称で、1970年にアデリアが、ビール瓶の着色技術を用いて、国内で初めてガラス食器に琥珀色を採用しました。
サラっと書きましたが、技術が詰まったお品なわけです。

続いて透明グラス。

(写真:【⠀Luc⠀】シリーズの食器。すべて著者私物。)

こちらは【⠀Luc⠀】( ルック )という1968年に発売されたシリーズです。用途に合わせて食器を選び、食を楽しむヨーロッパの習慣を日本でも取り入れて欲しいとの想いで開発されたとのこと。ガラスの生命である光線効果を高め、美しい輝きを放つ大胆で深いヨーロッパモダンなカット模様が施されています。
今はあまり見かけなくった、重厚感のあるグラスです。
どちらも、約50年前からの商品にも関わらず、現代にも通用するハイクオリティーで驚きます。私がこの時代の「アデリア」を好きになったのは、地元企業の商品だからという理由だけではなく、そこに詰まった技術や、古さを感じさせない洗練されたデザインに心を奪われ、ときめいたからです。そして現在、収集した品物を飾る専用の食器棚を複数所有するほどになりました。

(写真:昭和の時代を彩ったアデリア商品。すべて著者私物。)

3.石塚硝子株式会社って…?


この仕事してると、どうしても飲食業や農業など、食に関する業種とタッグを組みがちです。消費者に直接訴えられる業種のほうが、観光と結び付けやすく結果も見えやすいからです。
そんな中、「BtoBの企業とまちの結びつきも考えてみたいな~」と思ったのが、石塚硝子さんを深堀りしたきっかけでした。実際は、市内に工場はあるが直営ショップなどはなく、残念ながら多くのまちの人は、工場のことをよく知らないのが現状です。
愛知県岩倉市に本社を置く石塚硝子株式会社は、創業200年以上の歴史ある企業です。歴史を紐解けば、たまたま岩倉市にあるだけなんですが(笑)やっぱり地元が話題になるのは嬉しいですね。

(写真:【石塚硝子のアデリアバーゲン】年に1回のペースで開催される地元市民に向けた直売イベント。市民と工場で働く人や企業とのふれあいの場として大人気。)

「アデリアレトロ」がブームな今、岩倉市にこんな素敵な企業があるんだと、地元の人にも改めて知ってもらい、みんなで一緒に盛り上がっていけたらいいなと思っています。

(写真:【いわくらTKG】石塚硝子の社員や弊会などがタッグを組んで行っているまちおこし事業「いわくらTKGプロジェクト」(2020年始動)は、同社の“ほぼ卵かけごはん専用容器”を使用してまちの名産品を開発し普及しています。対企業ではなく、対消費者で大企業がまちおこしに参戦するなんて、なんだかワクワクしませんか?)

4.今も現役の「アデリア」グラスを探してみる

話題の「アデリアレトロ」は、昔懐かしのプリントがかわいい!と注目されています。基本的に、プリントグラスは家庭で使用する用途で普及していて、自宅用にはもちろん、贈答用にも活躍しました。
一方、先ほど紹介した「ルック」のような食器は、そのシンプルかつ重厚感のあるデザインから、家庭用だけでなく飲食店でも広く使われていました。そこで、市内にある喫茶店をめぐって、今も変わらず愛用され、現役で活躍しているグラスたちがどのくらいあるのか?まさに“リアル”な「アデリアレトロ」たちに会いに行ってみる事にしました。

(写真:先ほど紹介した【 ルック 】のシリーズ。アイス珈琲がキラキラして見えます。市内「珈琲屋ダフネ」にて。)

(写真:【 ソフィア 】「ルック」のように重厚感のあるフォルムは、高級感があり美しい。市内「しげ」(現在閉店)にて。)

(写真:【 ソワール 】は現在も販売のある人気のロングセラーシリーズ。市内「秋桜」(現在閉店、リニューアル予定?)にて。)

実際に活躍しているグラスに出会えた喜びは大きく、その堂々たる存在感に感動すらします・・・!
いくつかの喫茶店をめぐったあとは、岩倉市の白図を購入し、そこに市内で現役活躍中の「アデリア」たちをまとめました。

(写真:作成した地図。MAPに掲載した店のうち、現在すでに2店舗が閉店(リニューアル予定含む)している。)

5.まとめ

個人経営の喫茶店がどんどん閉店していく中、“リアル”な「アデリアレトロ」に出会えるのもだんだん貴重な機会となってきました。喫茶店×食器という組み合わせも面白いコンテンツだとは思うのですが、さて、どう活用しようか・・・と悩むところです。このように、何か気になるコンテンツをまちの観光資源として捉えてみることに、私は無限の可能性を感じています。

普段何気なく使われているグラスに目を向け、興味が出てきたらそのグラスに会いに行ってみる(使われているお店に行く)のも面白いのではないでしょうか。

この記事を書いた人
木村さや香

NPO法人いわくら観光振興会
人事教育長/イベント企画制作
1986年生まれ。岩倉市在住。1児の母。岩倉市PR大使い~わくんのアテンド"鯉のぼり恋子 "としても活動。「観光資源は自分たちでつくることができる」をコンセプトに、市内の農家や商店、消費者をつなぐ企画を提案している。

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