「ジンダイアケボノ」?なにそれおいしいの?
受け継ぐ覚悟はあるか?岩倉五条川の桜並木

はじめに

わたしは、愛知県岩倉市で観光まちづくり事業を受託し、企画・運営する「NPO法人いわくら観光振興会」で働いています。
岩倉市は、愛知県北西部・西尾張地区にあり、市のほぼ中心を流れる五条川は「日本のさくら名所100選」に選ばれている桜の名所です。
今回は、その岩倉五条川の美しい桜並木を後世に残すための取り組みの一つとして、定番品種の「ソメイヨシノ」に代わって植樹された「ジンダイアケボノ」について調べた事をきっかけに感じた、岩倉五条川の桜並木への思いを語ります。

岩倉五条川の桜並木がなくなる?!

テレビや新聞で、桜の名所がなくなるという報道を見たり読んだりした事はありませんか?実は、日本全国の桜の名所で多く植えられている「ソメイヨシノ」の寿命は、約60~80年といわれる説があるのです。
その説によれば、第二次世界大戦終戦後から昭和の高度経済成長期にかけて植えられた桜が多くあることを考えあわせると、近年多くのソメイヨシノが寿命を迎えるであろう、ということになります。
岩倉五条川の桜は、1949年、岩倉町(当時)が300本の桜を植えたのに始まり、その後少しずつ本数を増やしていき現在に至ります。約70年前から植え始めているわけですから、寿命60~80年説を唱えるのであれば、多くの桜が近い将来に枯れてしまい、今と同じような岩倉五条川の桜並木は見られなくなってしまうかもしれないのです。
次の項目では、岩倉五条川の桜並木を後世に残すために新たに植樹された「ジンダイアケボノ」について、またその植樹をきっかけにわたしが感じた事を書きます。

岩倉五条川の「ジンダイアケボノ」(撮影:いわくら観光振興会)

期待の品種「ジンダイアケボノ」とは?

日本において、花見用に植えられている桜で絶大な人気を誇る品種が「ソメイヨシノ」です。「ソメイヨシノ」は江戸時代後期に開発されたあと、高度成長期にかけて日本全国で圧倒的に多く植えられました。このため気象庁が各地の桜の開花・満開を判断する「標本木」としているのも「ソメイヨシノ」です。

岩倉五条川の「ソメイヨシノ」(撮影:いわくら観光振興会)

「ソメイヨシノ」は若木から花を咲かすこと、成長が早く大木になりやすいことなどから、桜の名所を作るのに適した品種と認識され広まりましたが、一方で、てんぐ巣病などの病気に侵されやすいという欠点もあります。元々、接ぎ木をしながら作ってきたので、人が手を掛けないと寿命を縮めやすいといった特徴を持っているようです。
また、高く広く枝を伸ばすため、木が倒れた際の被害も大きくなりやすいというリスクもあります。そこで、老朽化した桜を植え替えるため、新たに植える桜として脚光を浴びることになった品種が「ジンダイアケボノ」なのです。

「ジンダイアケボノ」(写真AC)

「ジンダイアケボノ」。カタカナで表記すると、なんだか呪文のようにも思える名前も漢字にすると、たちまち厳かに。

神 代 曙! 👀

「ジンダイアケボノ」は1991年に品種認定された桜で、開花時期が比較的「ソメイヨシノ」と似ており、成長した時の木の大きさは「ソメイヨシノ」と比べると少し小ぶりだそうです。万が一、木が倒れた際の被害も少なく済むと考えられますね。そしてなんと!「ソメイヨシノ」よりもてんぐ巣病などの病気にかかりにくいという特徴があるんです。

公益財団法人日本花の会では、てんぐ巣病が伝染性の病気であることから、すでに平成17年度から「ソメイヨシノ」の配布を中止、平成21年度からは苗木の販売も中止しており、「ジンダイアケボノ」への植え替えを推奨しているそうです。知らなかった・・・。

岩倉五条川の桜並木の現在

岩倉五条川の桜並木は、市民のみなさんによって大切に守られています。特に「岩倉五条川桜並木保存会」の活動は、桜並木を語るのになくてはならない存在です。川沿いにある約1400本の桜の保全管理等を行っています。
施肥作業をはじめ、ベッコウタケの発生調査・除菌作業、枯れ枝剪定・胴吹き・ひこばえ切りなど作業は多岐にわたります。はじめに、「ソメイヨシノ」の寿命の話をしましたが、岩倉五条川の桜が、植えられてからおそらく60年以上経過した古木でも毎年春に立派な花を咲かせてくれるのは、保存会の桜の管理があってこそだと思います。

一方で、岩倉市の五条川沿いに咲くソメイヨシノが衰えていることを受け、市は令和2年12月14日、「ジンダイアケボノ」への植え替え作業を初めて行い、四メートル弱の若木四本を植えました。岩倉五条川の桜並木では近年、台風などの強風により倒木被害が相次いでいる事を受け、後継木に「ジンダイアケボノ」を採用し、植え替えに乗り出したのです。
かかった費用は、伐採・伐根代などを含めて若木四本で約二百万円。市は少しずつ植え替えを進める予定とのことです。

おわりに・・・ちょっと踏み込んじゃうぞ!

この仕事に就いた当時、なんだかモヤっとした言葉があります。それは市民の方から時々寄せられる“五条川の自然を守るために、桜まつりはやらないでほしい” というご意見です。
川沿いに屋台を建てたり、多くの人が並木を歩けば、木の根に負担がかかり、木そのもののダメージにつながり少なからず寿命にも影響が出ます。また、心無い人がゴミを捨てたりすることで、景観も崩れます。それは確かに市民の憩いの場を傷つける行為に違いないのです。大切な場所を静かに守りたい気持ちには、素直に共感しています。
しかし、一方で“五条川の自然”とは何を指しているのか?とも思います。五条川も桜並木も、元をただせば人工的に作られた自然。人が手をかけて守っている自然です。
岩倉桜まつりは、のべ30万以上の人が訪れる大イベントにまで成長しました。はるか昔、岩倉五条川に人が集まるようにと桜を植え始めた先人たちが、たくさんの人が桜を見に岩倉市へ来る今の様子を見たら、どんなにかびっくりするだろうと、わたしはちょっと誇らしかったりもするのです。

昨年、今年と、新型コロナウイルス感染症の予感染拡大防止の観点から、毎年春に行われている「岩倉桜まつり」が中止となりました。はじめの年こそ、屋台が並んでいない桜並木の写真は二度と撮れないだろうから、もう今を受け止めて楽しむしかないんだ!と思うようにしていましたが、2年連続のまつり中止はやはり精神的に堪えるものがありました。そこには、当たり前のように行われていたお祭りが無くなったことで再確認できた“誇り”があったのです。

費用も手間もかかる桜並木を守っていくことは容易な事ではありません。「ジンダイアケボノ」の植樹のニュースを聞いた際に、「これからも岩倉五条川の桜を楽しみたいのなら、今すぐわたしたちと真剣に向き合って」と、桜並木に言われているような気持ちになりました。
「ジンダイアケボノ」の並木を岩倉市で見ることができるようになる日を楽しみにしつつも、わたしはやっぱり、自分が幼い頃から毎年美しい光景を見せてくれた「ソメイヨシノ」が大好きなのです。

この記事を書いた人
木村さや香

NPO法人いわくら観光振興会
人事教育長/イベント企画制作
1986年生まれ。岩倉市在住。1児の母。岩倉市PR大使い~わくんのアテンド"鯉のぼり恋子 "としても活動。「観光資源は自分たちでつくることができる」をコンセプトに、市内の農家や商店、消費者をつなぐ企画を提案している。

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