\ヘイお待ち!!/「まちのお寿司屋さん」は最高だ。

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1.はじめに

わたしは、愛知県岩倉市で観光まちづくり事業を企画・運営する「NPO法人いわくら観光振興会」で働いています。岩倉市は、愛知県の北西部、西尾張地区にあり、市のほぼ中心を流れる五条川は日本の「さくら名所100選」に選ばれたお花見処で、毎年春に行われる“岩倉桜まつり”が有名です。そんな岩倉市に先月、新しく有名チェーンの回転ずし店がOPENしました。今回は、市民が回転ずし店OPENに歓喜に沸く様子を見ながら感じた、寿司を通して見えてくる、まちの商業や人々の生活の変化と観光まちづくりについての話です。 

2. 「まちのお寿司屋」さんに出会って

 みなさんはお寿司といえば、回る寿司ですか?それともカウンターでひとネタずつ味わうちょっとリッチなイメージでしょうか?
わたしはお寿司といえばまわる寿司、「回転ずし」でしたが(というかお財布事情からそうならざるを得ないのですが)、2年ほど前に行った市内のあるお寿司屋さんのおいしさに衝撃を受けてから、1か月に1度ほどのペースでお小遣いをためて通っています。それまで、冒頭で示した二択、高級カウンターか回転ずしかの選択しかなかったわたしは、人情味あふれる「まちのお寿司屋さん」という存在に気付かされたのです。

(写真:夏季は白、冬季は紺に衣替えするお店の暖簾。/立喰寿司 かぎや)

 この「まちのお寿司屋さん」のことが、とにかく気に入ったわたしは、店主に自分の顔を覚えてもらうため、同じメニューを頼み続けて通う事にしました。決まって「にぎり」。それもさび抜き。(わさびが苦手で・・・泣)1つの皿に綺麗に並べられた寿司は、どれもネタが厚くて食べ応えがあります。そしてなんといっても「たまご」が旨い!

(写真:にぎり/立喰寿司 かぎや)

「にぎり」は990円。わたしのお財布にも優しいです。この値段でこのクオリティーのお寿司が食べられるのは衝撃的でした。
昭和の時代から続く店は座敷に2テーブルとカウンターの、比較的こじんまりしたお店です。大将とおかみさん、夫婦で仲良く営業しています。お寿司が美味しいことに加えて、店を出る際「気をつけてね!」と見送ってくれるお二人の優しさもまた嬉しいです。

3.「寿司組合」が存在したほど岩倉市には寿司屋があった

岩倉市内で現在「寿司屋」として営業している個人経営のお店の数は、残念ながら片手でおさまってしまう状況です。しかし昭和~平成にかけて、岩倉市内には「組合」があるほど寿司店がたくさんあったことを聞き、調べてみることにしました。
 
出るわ出るわ、狭い岩倉市の中に15店舗ほど。ファミレスやハンバーガー店が流行する前は、お寿司屋さんがファストフード店の役割を担っていたんだなあ、と感じました。
実際、昔から岩倉市に暮らす方々に、子どもの頃の近所のお寿司屋さんの思い出を聞いてまわると、それぞれの店にそれぞれの思いがあるのはもちろん、加えて「出前が多かった。」「高級品というよりファストフードに近い感覚で身近にあった。」「親がどこか出かけたとき、留守番していた自分にお土産として買ってきてくれるのが楽しみだった。」などの話が多く聞かれました。

(写真:市内にある古い看板。タコのキャラクターがかわいい閉店した寿司屋の看板。)

閉店したお店を見ると、数年前まで営業されていたお店もありますが、多くは昭和から平成にかけて店を畳んたようです。
世代交代せず自らの代で店を閉めた、など店側の事情もあるようですが、あくまで推測として、市内に大型のスーパーマーケットが出来たことや、ファミレスや回転寿司の流行などの時代背景もあり、近所のお寿司屋さんから出前をとる習慣や、お寿司屋さんへ行くこと自体が衰退したことが、閉店が多い理由のひとつだったのではないでしょうか。

4.それでも「まちのお寿司屋さん」が好き

わたしは子どもの頃、特別な日に祖母が連れて行ってくれる回転ずしが大好きでした。店はいつ行っても行列でしたし、競合店が安さを競ったりと、話題は尽きず、平成の食文化として、回転ずしは広く愛されていたと記憶しています。
 
時は流れ、わたしも人の親になりました。
回転ずしはあの頃と比べものにならないくらい大きな市場になっているように思います。娘は、某回転ずしチェーンの「ビッくらポン!」が大好きですし、寿司を食べに来たのにポテトを頼み、タッチパネルの注文操作だってお手の物です。
娘が大人になる頃には、お寿司屋さんイコール回転ずし店。回る寿司しか知らない人たちばかりになるかもしれないんだなぁ。などと想像してしまいます。といっても、もはや回転ずしは回転さえしない店もあるのですが・・・。
 
それでも、わたしは「まちのお寿司屋さん」が大好きです。もちろん、娘が好きな回転ずしも好きなんですが、注文してから握って出してくれるお寿司。ご自分からはあまりしゃべらないけど、話しかければ応えてくれる大将。お会計の時に女将さんと交わす何気ない短い会話。ゆっくりと時間が流れているような店内。そうした雰囲気をまた味わいたくなって、定期的にお店に通っています。

5.「まちのお寿司屋」さんと観光

「まちのお寿司屋さん」って、観光とは関係ない存在なのでしょうか?
お寿司屋さんは日本全国どこにでもあるし、定番のネタを使って、お寿司を出してもらって、それをおいしくいただく。さて、どこが観光と言えるのでしょう・・・?
 
冒頭にも述べたように、岩倉市といえば “岩倉桜まつり”が有名ですが、わたしは、すでに観光地として確立されているような場所に行くことだけが観光ではない、と考えています。桜や城跡などの名所そのものだけではなく、それらを支えるまちの人やまちの人の作るおいしいもの、まちの人がよく出かけるお散歩コースなど、みんなの“好きなこと”が観光資源そのものになるのではないでしょうか。「まちの寿司屋さん」も例外ではありません。変わったネタでなくても、オーソドックスなお店でも、そこに推しポイントがあれば、それは観光資源になり得ます。その前に、お店側のお気持ちが一番大切なのは言うまでもありませんが。
お寿司屋さんなら、観光というより商業振興では?と思われる方もいらっしゃるでしょう。もちろん、お店が儲かることや負担にならないことは重要ですが、お寿司屋さんが観光資源としてまちの魅力を楽しめるコンテンツとなり、さらにお店に誘客できるのであればwin-winの関係が築ける、と私は思っています。岩倉市には桜以外何もない、わけではないんです。固定観念を捨てて、気になったことは何でも調べ、面白がって楽しんで、体験として自分のモノにしていけば、まちの観光ネタは尽きないと実感しています。
“観光”を広く捉え、まちを知れば知るほど、その魅力はどんどん広がっていきます。みなさんも、“岩倉観光”を考え、いろいろな視点からの岩倉市の魅力に気づいたら、ぜひわたしにも教えてくださいね。

(写真:お寿司と、自作のキーホルダー(私物)/立喰寿司 かぎや)
この記事を書いた人
木村さや香

NPO法人いわくら観光振興会
人事教育長/イベント企画制作
1986年生まれ。岩倉市在住。1児の母。岩倉市PR大使い~わくんのアテンド"鯉のぼり恋子 "としても活動。「観光資源は自分たちでつくることができる」をコンセプトに、市内の農家や商店、消費者をつなぐ企画を提案している。

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